絵本で楽しむ子育て

~「ことば×体験」で、子どもたちの心に「ことばのたね」を育てよう~                          by michi

子どもが宿題をやりたがらない!それはもしかして?!~小学生の宿題っていつやるの?~

 「『宿題をやってから遊びに行きなさい』って言ってもなかなかできないんです」「うちの子は、友達と遊びたくて、宿題を適当にやっちゃうから困るんです」私が担任をしていたとき、よく相談されたことの一つです。そんなとき、私はいつも「遊んでから宿題した方がいい子もいますよ」と答えていました。

 

 「宿題をやってから遊びなさい」はよく耳にする言葉。でもそもそも、どうして宿題をしないと遊んではいけないんだろう。一番大切なのは宿題?そして、残り時間で遊べばいいということ・・・?

 

 私は、子どもたちの成長にとって、「友達との遊び」は「宿題」以上に大切だと思っています。友達との自由な遊びを通して、子どもたちは多くのことを学びます。もっといえば、友達との自由な遊びを通してでなければ学べないことが本当にたくさんあります。遊びの大切さについては、またどこかで書きたいと思っていますが、今の時代、習い事などで友達と予定が合わないことも多いから、遊べる時に遊ぶことは何より大切だと思うのです。

 

 楽しい遊びが待っているのに、ましてやもう何人かは遊び始めているかもしれないのに、落ち着いて宿題をやる方が難しいのでは?気になって仕方ないのも当然かもしれません。十分に遊んで帰ってきた後、また、夕食を食べて一息ついた後に宿題をした方が、落ち着いてゆっくり丁寧に取り組める子もいます。我が家の息子も、低学年の頃、そちらの方が合っていたタイプ。遊びの前に宿題をすると、そわそわして気もそぞろ。でも夕食後にリビングのテーブルを片付けてから、私が食器を洗うタイミングで一緒にやるようにしたら、すごく集中できるようになりました。

 

 子どもは一人一人タイプが違います。兄弟姉妹だってもちろん違います。その子がいつなら落ち着いて宿題ができるのか、観察し、いろいろ試してみるとよいかもしれませんね。

 

 子どもが高学年なら、宿題をするタイミングは、なおさら自分で決めてもよいと思います。高学年になると下校も遅いことが多いですよね。例えば5時頃帰って、10時頃寝るとして、家庭での時間はたった5時間ほどしかありません。その間に、習い事がある子もいるかもしれませんね。習い事と夕食・お風呂の時間を除けば、残りは3時間くらいの子も多いのでは?今の子どもたちは、学校で、私たち親が想像する以上に、時間を気にして、時間に追われて生活をしています。子どもの一日にとって、自分でコントロールできる時間は、本当に少ないのです。だからこそ、その時間は、親が「宿題はここでやらなければいけない」と決めるのではなく、子ども自身が「今日は、これとこれ(自分のやりたいこと)がしたいから、宿題はこの時間でやろう」と自分で決められるようにしてあげてほしいなと思います。自分の時間は自分で自由にコントロールできるという実感を積み重ねることは、やがて、自分の人生は自分でコントロールできるという実感にもつながっていくようにさえ感じるのです。

子どもが話したくなるように

 子どものことを知ろうとして、親の聞きたいタイミングで「今日は楽しかった?」「いいことあった?」などと聞いてしまう。すると子どもは、「うん」「楽しかったよ」と一言返事で返してくることが多い。続けて「何が楽しかったの」などと聞く。まるで一問一答。面接のようになってしまう。それは子が話したいタイミングではないからだと今更ながら気付いた。

 よく考えたら、自分だってそうだ。家事で忙しいとき。他の考え事で頭の中がぐるぐる回っているとき。子どもが親とじっくり話したいといろいろ尋ねてきたら、きっと同じ反応になる。子どもならなおさら。

 子どもが話したいタイミングをキャッチする。子どもが話したくなる場を作る。

 ゆったりした食事時間をつくる。親があえて暇そうに見せる(テレビをみながらげらげら笑ってくつろいだり・・・。忙しい中だとこれがなかなか難しいけれど、効果絶大)一緒にお風呂に入る。一緒に散歩する。習い事の送り迎えの車の中。

 子どもが話しかけてきたら、心の中で「きたきた」とガッツポーズ。相づち・共感で、さらなる子どもの言葉を引き出す。回りくどいようだけど、それが一番我が子の心を理解できるから不思議。それって、魚釣りに似ているなとふと思った。釣ろうと思って糸を垂らした瞬間に話しかけても、魚(子ども)はまだ水の中を泳いでる。針に魚(子ども)が食いつきたくなるように、環境を整えて待つ姿勢が大切なのかなと思った。

ぼおっとする時間が生み出すもの

 シャンプー中、いろんな考えがふわっと浮かんでくる。忘れていた大切なことをふいに思い出したり、授業の新しいアイデアを思いついたり。すぐに書き留めたくなるけれど、頭も手も水びたし。終わった頃には忘れてしまうこともしばしば。

 脳がひとりでに動き出している不思議な感覚。まるで、無意識の世界にアクセスし、必要な情報やアイデアを湧き上がらせているみたい。さらに、そんな状態から生まれた考えや気付きは、机に向かってじっくりと考えるときもはるかによいものだったりする。意識的にエンジンをかけ続けるフル稼働状態の脳ではできない「すご技」だ。

 今の子どもたちは、ぼおっとしながら想像をめぐらす時間、どれだけもてているかな。しなければいけないことだらけ、考えなければいけないことだらけの学校は、脳が常にフル稼働状態。家庭までそれらでいっぱいにしてしまわないように、意識していきたいな。子どもこそ、ぼおっとする時間から生まれる学びは、きっとすごく大きいから。 

「それな」の魔法

 小学生の娘といとことの会話。しきりに「それな」が飛び交う。「それな」は、私たち世代の言葉に直せば、「そうだよね。分かるよ」という認め合い。嬉しくてお互い会話が進む。

 大人も子どもも一緒。自分の考えを相手に認めてもらいたい。自分のことを分かってもらえる相手だから話したい。そんな聞き方、わたしたち大人はできているかな。

絵本がくれたプレゼント

 このブログを書くために、我が子が幼い頃読んでいた絵本が入っている段ボール箱を押し入れから引っ張り出し、開けてみました。開けた瞬間、心にふわっとしたあたたかいものがあふれ出てきました。目にする絵本一冊一冊から、幼い頃の我が子のしぐさやその時のふれあいが、脳裏によみがえってきたのです。一瞬でその時代に心が引き戻されていくような、とても不思議な感覚でした。写真やビデオなど、思い出を残すデジタル機器はたくさんあります。でも、絵本も、まるでデジタル機器のように、我が子と心を通わせた記憶を残すことができるのですね。カメラやビデオなどと違って、実在の姿が見えない分、記憶がふわふわと漂い広がっていくような、その時代を俯瞰して見ているような、なつかしく不思議な感覚になります。

 今、みなさんが、自分のお子様と絵本を通して過ごしている時間は、きっと何年も先に、これもまた絵本を通して、幸せいっぱいのプレゼントとして自分に返ってくる・・・そんな素敵な時間なんだと思います!

つみきの世界に合わせて、言葉の世界も広がるよ!「つみきでとんとん(絵本)」

今日、ことばと体験をつなぐヒントとして、紹介する絵本は、

「つみきでとんとん」

竹下 文子・文  鈴木 まもる・絵  金の星社

 

 小さな積み木のピースから、どんどん世界が広がり、積み木が動き出していく。この様子は、読んでいて圧巻です。読んでいると、自分たちが小人になって、『つみきのくに』に入り込んでしまったような感覚になります。

 積み木の1ピースは何も意味を持ちません。だからこそ、子どもたちはそこから意味を見出し、自由に想像を広げていくことができます。この絵本は、そんな想像を膨らませている子どもの心の声を、豊かに表現してくれています。

 息子も幼い頃、この絵本が大好きでした。この積み木の世界を再現したら絶対に喜ぶだろうな。そう思ったわたしは、この絵本にそっくりな積み木を購入し、絵本と同じことばを声に出しながら、息子と一緒に様子を再現して遊びました。息子は特に、怪獣が積み木の壁をこわすシーンが大好きで、絵本の言葉『これでだいじょうぶ と おもったら・・・』『うわあ かべが くずれたよ』を使って何度も何度も楽しみました。こわす瞬間の息子のわくわくした表情が今でもよみがえってきます。

 さらに、『とん とん ととん』『○○かな? まだまだ』とやっているうちにどんどん空想も広がっていき、子ども自身がストーリーを作り始めます。自分の考えを積み木で表現し、そこに言葉が生まれる。それを聞くのもまた楽しいです。お子さんの言葉が少ない場合は、お家の人が、子どもの作り出す世界に合わせて、絵本のように楽しくことばをかけてあげるとよいですね。様子を説明するような難しい言葉でなく、子どもの作る世界に乗っかったシンプルで短い言葉掛けがよいと思います。そうすることで、言葉×体験がどんどん進み、「ことばのたね」が育まれていきます。幼い子どもにとって、積み木は、自分の考えを表現しやすくする魔法のような玩具だと感じます。

 積み木遊びと絵本をつないだ後で、もう一度この絵本を読んだ時の子どもたちの想像力は、さらに豊かに広がっていくでしょう。積み木の世界と言葉の世界の広がりを、是非楽しんでみてくださいね。

※「ことばと体験をつなぐと何かいいことがあるの?」「ことばのたねって何?」と思われた方は、是非、本ブログ記事4/24~27も合わせて読んでいただけたらうれしいです。

 

雨の日探検に行きたい!「雨、あめ(絵本)」

今日、ことばと体験をつなぐヒントとして紹介する絵本は、

「雨、あめ」

ピーター・スピアー作  評論社

 

 「雨が降ってきたから家に入りなさい」「雨だから、行くところがないね。どうしよう」私たちの周りからはそんな声が聞こえてきそうです。でも、この絵本の中のお母さんは違います。雨の中、「さあ、行っておいで」と笑顔で子どもたちを送り出します。

 

 そこで待っていたのは、すばらしい大冒険。

 雨だからこそ見えるきらきらした景色。

 雨だからこそ味わえる楽しい経験。

 雨の日、生き物たちは何をしているのかな?

 そして、思う存分探検し、びしょ濡れで帰ってきた後の

 お風呂や食事の温かさ

 さらに、雨上がりの晴れのまぶしさやうれしさ

 

 絵だけで表現されているのに、伝わってくるメッセージのなんと豊かなこと!この本を読んだら、きっと子どもたちは、雨の日の探検がしたくなるでしょう。ぬれたって、洗えばすぐに元通り。おまけに貴重な体験の宝物付き。「雨の日は家で静かに過ごす」は、大人側の意見なのかもしれませんね。

 

 小学校1,2年生で学ぶ生活科の中にも、雨の日についての勉強があります。それは、雨の日の遊びの体験が子どもたちに貴重な学びをもたらすからでしょうね。

 

 我が子の傘&長靴デビューは、この絵本を読んだ頃でした。この絵本を読んで雨の日のお散歩に行きたくなった娘は、家で、長靴をはき、買ったばかりの傘をさしながら、雨を心待ちにしていました。雨がやっと降った日のうれしそうな顔!娘は、きらきらした瞳で、わたしと一緒にお散歩に出かけました。いつも見ている静かな川に排水溝から水がじゃあじゃあと流れ出ているのに驚いたり、ブロックの壁にカタツムリがたくさん張り付いているのをつんつんしたり、田んぼ近くでカエルと出会って追いかけたり、水たまりにジャブジャブ入ったり・・・。

 

 この本を一緒に楽しんだ後、「雨の日たんけん行ってみる?」と問いかけたら、きっと行きたいっていうでしょう。だって、子どもは探検が大好き。本と一緒の場面を味わいたくて、うずうずしちゃう子もいるかも。ぬれたり汚れたりすることなんて気にせず、やりたいことは、安全ならどんどんやらせてあげたくなってしまいます。

 

 雨の日探検の後、この絵本を再び見たときには、きっと絵本の世界と自分の体験がつながり、さらに子どもたちの心に想像が広がっていくのではないかと思います。絵だけの絵本から、その子なりの言葉があふれてくるかもしれませんね。

 

※「ことばと体験をつなぐと何かいいことがあるの?」と思われた方は、是非、本ブログ記事4/24~27も読んでいただけたらうれしいです。